赤茄子です。
前回の記事は右心不全の理学所見である "頸静脈怒張" についてでした。
本日は左心不全の理学所見についてです。
"ベンドプニア"って知ってますか?
ベンドプニア(Bendopnea)
日本語訳で "曲げ呼吸" です。
心不全患者が靴紐を結ぶように屈んだ姿勢をとったときに、呼吸苦が出現することが多いなーって感づいた方が、「これってスクリーニングに使えるんじゃね?」と閃いて生まれたそうな。
実際、心不全患者の28%に上記所見が見られたそうです(100%じゃないんですね)。
Jennifer, TT. et al: Characterization of a Novel Symptom of Advanced Heart Failure: Bendopnea. JACC Heart Fail, 2(1), 24-31, 2014.
ベンドプニアのメカニズム
呼吸苦の出現は左房圧と関係し、左室拡張末期圧の上昇を示唆する所見とされています。左心不全では、全身に血液を送り出す左心が機能しにくくなることで、左心に血液が溜まりやすくなります。そして、左心に血液を流入する経路である肺静脈がうっ血します(肺うっ血)。この状態では肺に水が溜まりやすくなっているとはいえ、抗重力位であれば肺底部に水がたまり、上の方は濡れないため、拡散障害が顕著には出現しません(背臥位だと肺が広く水浸しになるので呼吸苦が出現しやすいですよね→起坐呼吸)。
ところが、座位で体を曲げる姿勢を続けると左室が圧迫を受け、拡張しにくくなります。すると本来左心に流入するはずだった肺静脈血が肺静脈に溜まりやすくなり、肺うっ血が助長されます。普通に座っているときよりも肺に入ってしまう水が多くなるため、拡散障害が助長し、呼吸苦が出現するという流れになります。
起座呼吸とにたような所見ですが、患者を横にさせたり起こしたりしなくてよいため、より簡易的に確認できる所見と言えるのではないでしょうか?
赤茄子