本日の疑問
新人セラピストの皆さん、体調崩されたりしていませんでしょうか?
職場の個人目標で「スタッフのメンタルヘルスを改善する」と掲げたものの、「具体的には?」と聞かれ沈黙していた赤茄子です。
目標に掲げた理由としては、新入職のスタッフの中に時折体調を崩される方がチラチラおり、どうも肉体的な疲労だけじゃなさそうだなーと感じたからです。
入職後はやる気に満ちあふれているのに、徐々に燃え尽きて体調を壊す。聞く話ではどこの病院や施設でも似たような状況があるそうで、そのまま退職されるパターンもあるそうな。なぜなんでしょうか?
リアリティショックとバーンアウト
「国家試験をくぐり抜け、やっと理学療法士になった…誰よりも治せるPTになる!」
~3ヶ月後~
「学校であれだけ勉強してきたのに、失敗ばかり続く…勉強が足りなかった?もうどうでもいいや…」
こんな感情をもったことはありませんでしょうか。自分は学校でしっかり勉強してきたし、今も続けている。なのにうまくリハビリにつながらない。患者とうまく関われない。職場スタッフと連携できていない。
看護師の領域では、このような理想と現実のギャップに危機感を感じる現象を"リアリティショック"と言うそうです。
リアリティショックの定義は以下になります。
”数年間の専門教育と訓練を受けても,卒業後の実社会での実践準備ができていないと感じる新卒専門職者の現象や特定のショック反応1)”※原著確認できなかったため、引用元3)から抜粋した
このリアリティショックは、生じることが必ずしも悪いことではなく、ポジティブに働けば専門職者として責任感を芽生えさせる一助になります。
一方、ネガティブに働くとバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥りやすく、バーンアウト後は離職になりやすいと報告されています2)。
あくまで、看護師領域でのお話でしたが、同じ医療業界ですから、理学療法士にも生じそうですよね。
理学療法士のリアリティショックとバーンアウトへの影響
理学療法士の養成校卒前と卒後(入職後)3ヶ月でのリアリティショックの有無とバーンアウト項目の関係を調査した報告がありました。結果だけお伝えしますと、卒後3ヶ月でリアリティショックを生じた新人理学療法士は存在し、生じた理学療法士は"心理的疲労感"や"虚脱感"が高かったと報告しています3)。やはり、新人理学療法士にもリアリティショックは出現し、心的なストレスにつながる場合もあるのでしょう。
今後の私案
リアリティショックは卒後3ヶ月くらいから生じはじめ、6ヶ月頃まで続き、ポジティブに働くかネガティブに働くかの分かれ道に至るそうです。この間に指導者として新人本人の理想について聞き出し、現実とのギャップを埋めるような指導を行っていければいいと思います。闇雲に否定するのではなくてね。
また、以前の記事で作業療法士は業務特性上バーンアウトに至りやすいと紹介しました↓以前の記事)。
理学療法士視点では無く、リハビリスタッフの先輩として他職種へのバーンアウト予防に取り組みたいものです。
赤茄子
1) Kramer M, Schmalenberg C: Development and evaluation of essentials of magnetism tool. J Nurs Adm, 34: P365-378, 2004.
2) Tominaga M, Miki A: A Longitudinal study of factors associated with intentions to leave among newly graduated nurses in eight advanced treatment hospitals in Japan. Ind Health, 17: P886-897, 2008.
3) 和田三幸, 小野田公, 他:理学療法士のリアリティショックおよびバーンアウトの状況調査─卒業前と就職3ヵ月後の比較─, 理学療法科学, 35(1): P121–124, 2020.