G1・G2の図:Laura A, et al. Use-Dependent Hemispheric Balance.The Journal of Neuroscience, 31(9): P3423-3428, 2011. の図13から引用
本日の疑問
赤茄子です。
前回、非障害半球と障害半球間で抑制のアンバランスが生じること、非麻痺肢の過使用が障害半球への抑制を強めるという話をしました(↓前回の記事)。
この半球間抑制の理論では、麻痺肢が使えない(障害半球の活動が低下する⇨非障害半球への抑制が減少する)から障害半球への抑制が強まるとも考えられますし、非麻痺肢を過使用する(非障害半球の活動が増加する)から障害半球への抑制が強まるとも考えられます。
半球間抑制のアンバランスは"麻痺肢の不使用"と"非麻痺肢の過使用"、どちらの影響を強く受けるのでしょうか?
非麻痺肢を抑制しないと障害半球への抑制が増大する(かも)
同じ疑問をもった研究者がすでに調査してくれていました。
ただ、実際の脳卒中患者を対象にしたわけでは無く、健常若年成人を対象とした実験のため、タイトルには"(かも)"を付け足しておきます。
若年成人の右手を10時間拘束し、グループ1には左手の使用を許可、グループ2には左手の使用を禁じました。その後の脳活動を調査しました。
結果は、両グループで左半球から右半球への抑制が減少し、グループ1では左半球への抑制が増大、グループ2では左半球への抑制は増大しなかった1)というものでした。
G1・G2の図:Laura A, et al. Use-Dependent Hemispheric Balance.The Journal of Neuroscience, 31(9): P3423-3428, 2011. の図13を引用
つまり、抑制の減少については障害半球の活動低下(麻痺肢の活動低下)で生じ、抑制の増大については非障害半球の過活動(非麻痺肢の過使用)で生じる可能性があるということですね。
加えて、10時間という短い時間で抑制が増大してしまうのですから、非麻痺肢の過使用には介入初日から注意したほうがいいと考えられます。
再度いいますが、あくまで健常若年成人を対象とした実験なので、脳卒中患者で同じことが言えるとは断言できませんよ…
本日のまとめと私案
障害半球から非障害半球への抑制減少については障害半球の活動低下(麻痺肢の活動低下)で生じ、非障害半球から障害半球への抑制増大については非障害半球の過活動(非麻痺肢の過使用)で生じる(かもしれない)。
比較的認知のよい患者さんであれば、こういったメカニズムを事前に説明しておくことが機能予後に関わってくるのではないでしょうか。
赤茄子
1) Laura A, et al. Use-Dependent Hemispheric Balance.The Journal of Neuroscience, 31(9): P3423-3428, 2011.
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