本日の疑問
赤茄子です。
後輩スタッフが「この患者低栄養状態だから、運動負荷上げない方がいいと思ってまして…」と。
栄養状態の指標として見せられたのはアルブミン(Alb)値のみ。確かに低いなと思いつつ、食事も取れているし、やせ細ってもいない。ただ、CRP(血清C反応性タンパク)が高い…
この患者は低栄養状態と言っていいのでしょうか?アルブミン値で栄養状態を判断していいのでしょうか?
そもそもアルブミンは低栄養の指標として不適切
これまで、アルブミンは低栄養状態の指標として知られてきました。
というのも、厚生労働省も説明しているように、タンパク質が必要量取れていない状態を低栄養としている1)ため、タンパク質がアミノ酸に分解され、肝臓で産生されるアルブミンが栄養状態の指標と考えられていたからです。
ただし近年では、アルブミンを栄養状態の指標として用いるのは不適切だと報告されており、米国静脈経腸栄養学会(ASPEN)と米国栄養士会(AND)の低栄養の特定には推奨されなくなりました2)。
なぜアルブミンは非推奨となったのでしょうか?
アルブミンは炎症の影響を受け低値になる
通常、食事で摂取、消化吸収されたアミノ酸は肝臓に取り込まれ、アルブミンを含む各タンパク質に作り変えられます。
一方、身体に炎症が生じる(炎症性サイトカインが増加)と、タンパク質合成の優先順位が変わります。
具体的には、優先されていたアルブミンの産生が抑制され、かつ既存のアルブミンの分解が亢進します。一方、CRPの産生が亢進されます。
CRPとアルブミン値は負の相関関係であるため、CRP値が高くなっている時は、タンパク質を摂取できていたとしてもアルブミンの数値が低く出てしまうのです。
アルブミンは栄養状態だけでなく、炎症やその他の影響を受けることから、低栄養の特定に非推奨となりました。
それでは、リハビリする上で、どんな栄養指標を確認すればいいのでしょうか。
食欲や食事量
まず、そもそも食事量をきちんと確保できているかが重要です。食事が十分取れていれば、炎症が治まるに連れてアルブミン値は回復し、栄養状態も改善することが予測されます。
体重の低下
低体重(BMI:18.5未満)は低栄養状態3)になります。ただし、透析や心不全患者では数値の解釈が異なってしまうため、注意が必要です。
四肢の周径
四肢の周径でも栄養状態のスクリーニングが可能です。前腕周囲長<21cm、下腿周囲長<30cmの場合3)、低栄養の可能性があります。
若林秀隆(監):リハビリテーション栄養ポケットガイド. 株式会社ジェフコーポレーション , 2014.
本日のまとめ
アルブミンは炎症により数値が変動するため、低栄養の判断として安易に用いてはいけない。複数の栄養評価指標を用いて複合的に判断すべきである。
冒頭の運動負荷に関してはアルブミンが低いから…と考えるのでは無く、他の栄養指標も用い、炎症が原因なのか・栄養の摂取状態が良くないのかを判断して決めた方がいいですね。
赤茄子
1) 低栄養 / PEM | e-ヘルスネット(厚生労働省)
(2022/6/25閲覧)
2) White J, et al: Academy of nutrition and dietetics and American society for parenteral and enteral nutrition: Characteristics recommended for the identification and documentation of adult malnutrition (undernutrition) J. Parenter. Enter. Nutr, 36:275, 2012.
3) 若林秀隆(監):リハビリテーション栄養ポケットガイド. 株式会社ジェフコーポレーション , 2014.