本日の疑問
赤茄子です。
人の呼吸は浅かったり深かったり、速かったり遅かったり、と様々です。
また、呼吸器疾患により呼吸状態も様々な変化が生じますよね。
換気障害が生じることで1回換気量が減少すると、換気量を補うために呼吸回数を多くすることで分時換気量の辻褄を合わせようとします。
例えば…
【深くて遅い呼吸】1回換気量(750mL)×1分間の呼吸数(10回)=分時換気量7500mL
【浅くて速い呼吸】1回換気量(300mL)×1分間の呼吸数(25回)=分時換気量7500mL
同じ分時換気量なら問題ないよね…。
本当に?
換気に関与しない領域と実際の換気量
結論からいいますと、浅くて速い呼吸は実際の換気量が少なくなるので効率が悪い呼吸となります。
理由は、換気に関与していない領域を考慮していないからです。
肺胞換気と解剖学的死腔
医療情報科学研究所(編): 病気が見える Vol.4 呼吸器 第2版. 株式会社メディックメディア, P4,平成25年.の図:下気道の分岐を引用改変
吸気により取り込まれた空気は、上記図の青と赤で囲まれた領域に送られます。
そのため、分時換気量は青と赤で囲まれた領域で行われる換気の量を指します。
ところが、実際の換気は肺胞とその周囲にある毛細血管で行われるため、肺胞の存在する呼吸細気管支~肺胞嚢が実際の換気領域(図赤で囲んでいるとこ)になります。
この領域での換気を肺胞換気といいます。
一方、肺胞の存在しない領域(図青で囲んでいるとこ)は換気に関与しない領域になります。
この領域を"死腔"といいます。
死腔を考慮した分時換気量の計算
死腔は約150mLになります。
そのため実際の1回換気量(肺胞換気量)は1回換気量ー150mLになります。
これを踏まえて冒頭の換気量を計算すると…
【深くて遅い呼吸】1回換気量(750-150mL)×1分間の呼吸数(10回)=分時換気量6000mL
【浅くて速い呼吸】1回換気量(300mL)×1分間の呼吸数(25回)=分時換気量3750mL
と、実際の換気量に2250mLも差が出るんですね。
この差分、深呼吸のほうが呼吸効率が良いと考えられます。
本日のまとめ
- 一回換気量には換気に関与しない死腔量も含まれてしまう
- 同じ分時換気量でも、実際の換気量(肺胞換気量)で計算すると、深呼吸の方が換気量が多くなる(呼吸の効率が良い)
私たち理学療法士がなぜ深呼吸を勧めるか考える一助になれば幸いです。
赤茄子