本日の疑問
赤茄子です。
膝痛を訴える患者は非常に多いですが、膝前面、特に膝蓋骨の下らへんが痛くなると訴える患者をよく見ます。
1年目の時は「それは脂肪体が原因だよ」と言われ続けていたためか、反射的に「脂肪体が原因」と考え、付近をマッサージしていた記憶があります。
脂肪体がどうなってるのが問題なのか?
それがどうして運動時の疼痛につながっているのか?
わからずにもみほぐしていた自分に喝を入れたいものです…
結局、脂肪体と膝痛には関係があるのでしょうか?
膝蓋下脂肪体の存在と役割
膝蓋下脂肪体は膝関節伸展位では膝蓋腱・脛骨粗面付近(上記図左の茶色の部分)にあります。
この脂肪体は膝関節の屈曲運動が生じると膝蓋腱・脛骨に押されることで上方へ移動し、膝蓋骨の後面に潜り込むように広がります。
そのため、膝関節の屈曲に伴う関節内圧の上昇を抑えるクッションとして働きます。
また、膝蓋下脂肪体は膝関節を構成する組織の中でも最も疼痛を感知する組織1)と言われているため、脂肪体への過剰な圧やストレスを痛みとして感知するセンサーとしても働きます。
膝蓋下脂肪体炎と膝痛
では、脂肪体がどうなると疼痛が生じやすいのか?
結論から言いますと脂肪体が炎症し、線維・肥厚化することで過剰な圧・ストレスを受けやすくなることが原因と考えられます。
また、変形性膝関節症で生じる関節炎が脂肪体に波及することで炎症が生じると考えられています。
線維・肥厚化した脂肪体は変形しにくくなるため、クッションとしての役割を失います。
また膝関節屈曲に伴う膝蓋腱伸長を介達した牽引ストレスや圧迫ストレスを受けやすい状態となります。
何度も申しますが、膝蓋下脂肪体は疼痛を感知するセンサーのため、圧迫ストレス増大に伴い疼痛が生じる…これが膝蓋下脂肪体炎による膝痛出現のメカニズムになります。
Hoffa signで確認してみよう
膝蓋腱を上から圧迫するようにして、脂肪体への圧迫ストレスをかけます。
圧迫により同部位の圧痛を認めれば膝蓋下脂肪体炎になっている可能性があります。
本日のまとめ
- 膝蓋下脂肪体は関節内圧を調整するクッション的なもの
- 疼痛を感知するセンサーの役割もある
- 脂肪体が炎症すると線維・肥厚化し、変形しにくくなる
- 変性した脂肪体は牽引や圧迫ストレスを受けやすく、疼痛として感知しやすくなる
とりあえず、Hoffa Sighを見てみましょう。
疼痛があるなら脂肪体をもみほぐしてみるのもありなのではないでしょうか。
赤茄子
1) Dye.S, et al:Conscious neurosensory mapping of the internal structures of the human knee without intraarticular anesthesia. Am J Sports Med,26:P773-777,1998.