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杖に頼り過ぎて手が疲れます…疲労に対処する杖の選択とは?

本日の疑問

赤茄子です。

「手が疲れちゃって、もう歩けません」

杖歩行で、こんな発言される患者をたまに見ます。

本来歩行というものは、下肢で身体を支持しながら移動するものであり、手で歩くものではありません。

上肢はあくまで補助と考え、主要に頼るべきではないと考えます(身体機能によってはこの考え限りではありませんが…)

にも関わらず、上肢の負担が高い歩行練習を続けてしまい、下肢は廃用・上肢は疲労でリハビリ進まない…

使っているその杖、本当に適切でしょうか?

T字杖へ荷重量と上腕三頭筋負担

「手が疲れます」のほとんどは上腕三頭筋と考えられます。

なぜなら、T字杖に頼った歩行を行っている方は杖への荷重量が多い(床反力が大きい)にも関わらず、肘関節のモーメントアーム調整がほとんどされないからです。

???

どういうことでしょうか?

関節モーメントとは

関節モーメントとは、関節運動を生じさせる力の大きさのことです。

詳細に説明すると、関節にかかる力(今回は床反力)×モーメントアーム(関節から床反力線までの距離)=関節モーメントになります。

杖に荷重がかかる(床反力を受ける)場合は肘関節を軸に屈曲方向に関節モーメントが働くことになります。

そのままですと肘が曲がって支えになりませんよね。

そのため、屈曲方向への関節モーメントを打ち消す方向に力(今回の場合は上腕三頭筋活動)が関節を一定の位置に留めるために働きます。

荷重量(床反力)と上腕三頭筋活動

以前の記事で、杖への荷重量を体重の10%に維持した時の肘関節角度と上腕三頭筋活動の関係について説明しました。

この記事の内容は、床反力を変化させずモーメントアームを大きくさせることで上腕三頭筋負担が増大するとも解釈できます。

では関節角度は変えず、杖への荷重量が増加した場合はどうなるのでしょうか?

上の図はT字杖への荷重を体重の5%と20%とした時の姿勢の違いを示しています。

床反力が大きくなる(体重の20%の図)と床反力線に身体を近づけることで全身の関節負担を減らそうとしますが、肝心の肘関節はどうでしょうか?

多少モーメントアームが短くなってはいますが、肩関節と比較するとモーメントアームが長く、加えて床反力は増大しているため上腕三頭筋負担の増大が予測されます。

T字杖へ頼った歩行を続けると、上腕三頭筋の筋疲労で長時間歩行できません。

上肢負担を考慮したロフストランド杖のメリット

では、どのような杖を使用すれば上腕三頭筋負担が軽減されるのでしょうか。

ここまでの説明から考えると、荷重量が増えても肘関節のモーメントアームが短くなるような杖が望ましいと考えられます。

そして、その様に設計されているのがロフストランド杖になります。

上記図のように、ロフストランド杖は杖軸に対し、前腕カフ部分が20°程度傾斜するように設計されています。

加えて、前腕は動かない様固定されるため、床反力線が常に肘関節近位を通る(モーメントアームが常に短い)ようになります。

そのため、荷重量が増加しても上腕三頭筋負担は増大しにくくなっています。

本日のまとめ

  • 関節モーメントは杖への荷重量×モーメントアームで決まる
  • 杖使用字は肘関節モーメントが増大すると、上腕三頭筋負担が増大
  • T字杖に頼る歩行では、床反力・モーメントアームともに大きいため、上腕三頭筋負担がより増大
  • ロフストランド杖は肘関節のモーメントアームが短くなる設計のため、荷重量が増えても上腕三頭筋負担が増大しにくい

教科書でも、T字杖は体重の20~30%まで、ロフストランド杖は体重の50%程度カバーできると言われてます。

患者が疲れすぎないようリハビリを進めるためにも、適切な杖の選択を行えるようになりたいものです。

赤茄子

参考文献

小柳磨毅(編)・他:PT・OTのための運動学テキスト 第1版補訂版. 金原出版株式会社. P526-529. 2021.