廣田千香・田中一正 :COPD患者における歩行後の経皮的酸素飽和度の回復過程に関連する因子の検討. 昭和学士会誌. 75(2). 2015
赤茄子です。
外来でのCOPD患者が初担当となりました。担当医からは「HOT(在宅酸素療法)の酸素量決めといて~」と依頼があったことが始まり。酸素吸入によりSpO2: 93~94%維持できてるしよかったね~で終わりません。そこそこきつめの運動行うと88%とかに低下します。ただ低下するならいいのですが、もとの数値に回復するまで時間がかかります。
酸素入れてるのに、回復に時間かかるのってなんでなん?
というわけで、関係ありそうな論文を一つ紹介。
COPD患者を集めて、Incremental Shuttle Walking Test(ISWT:漸増シャトルウォーキングテスト=徐々に負荷上げて歩行させるやつね)と6分間歩行試験させて、安静~歩行中~歩行後SpO2回復するまでの時間とSpO2の関係を面積値として算出しました。そして、歩行後~SpO2回復するまでのSpO2面積値と各呼吸機能検査値との相関を調査したところ…
ISWT後のSpO2面積値は%DLco(拡散能)と有意に相関、6分間後のSpO2面積値は%DLcoとと%PEF(ピークフロー:換気能)の2つと有意に相関しました。
同じ歩行検査のうち6分間歩行だけ%PEFとも相関したのはなぜでしょうか?
考察では、ISWTが短時間で実施できる検査であるのに対し、6分間歩行は長時間歩行するため、COPDに伴う動的肺過膨張(呼気しにくく、吸気だけされやすいことによる肺の膨張)が生じ、横隔膜が動きにくくなることで吸気自体も行いにくくなる(酸素を取り込みにくくなる)からと示唆されています。
また、①DLcoを高い・低いで群分けした時のSpO2回復面積値の比較、②SpO2回復面積値の高い・低いで群分けした時のDLcoの比較を行ったところ…
廣田千香・田中一正 :COPD患者における歩行後の経皮的酸素飽和度の回復過程に関連する因子の検討. 昭和学士会誌. 75(2). 2015の図3・図4を引用
両方とも有意に差がありました。つまりCOPD患者で拡散能力が低い人はSpO2が回復するのに時間がかかり、SpO2の回復に時間がかかる人は拡散能力が低いという結果でした。
拡散能力は改善できる?
COPD患者は肺の器質的変化により拡散能力は低下します(仕方がない…)。でも、運動による血流量増加や胸郭・呼吸筋のモビライゼーションによる酸素取り込み量の増加によって若干改善できるかもしれないですね。
大事な2分間の休憩
本研究ではCOPD患者は少なくとも2分間は低酸素状態が続くとの結果でした。運動を行ってSpO2が低下した後は、少なくとも2分は休憩するよう心がけて見ましょう。
最後に…
今回のイラストもスマホに保存して復習しよう!
by赤茄子