職場の見えないストレス図鑑

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ついつい使ってしまう非麻痺側の罠。半球間抑制のアンバランス。

本日の疑問

赤茄子です。

脳卒中のリハビリで重要な可塑性について、以前の記事で「可塑を進めるためには運動スキルが向上しても練習を続けよう。3日でスキルが向上しても可塑が進むには10日はかかりそう」と話しました(↓以前の記事)

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なるほどなるほど。麻痺肢を使用した運動スキルを高めていけばいいのね。簡単じゃん。

…と思って良くなった試しはありません。ついつい非麻痺肢を使ってしまうことがあります。

「使ったくらいで何か影響あるの?」とも疑問に思っていまいますが、非麻痺肢を使ってしまうことは良くないことなのでしょうか?

半球間抑制のアンバランス

正常な半球間抑制

本日の疑問を解決するにあたり重要となるのが"半球間抑制"です。大脳半球は脳梁を介して相互に抑制し合う関係にあります。これは左右の上下肢にも影響し、右半身を使用するときは左半身をの活動を抑制、左半身を使用するときは右半身の活動を抑制することになります。

ただ、完全に抑制されることなんてありませんよね?「右半身を使っている間は左半身は使えない」なんてことあったら生活なんてできません。左右の半球は適度に抑制し合っていると言えます。

アンバランスな半球間抑制

一方、脳卒中等で半球に障害が生じると、この半球間抑制のバランスが崩れます。具体的には、非障害半球から障害半球への抑制が強まります。その結果、障害半球の活動が生じにくくなり、麻痺肢が活動しにくい状態となります。

加えて、麻痺肢は使いにくい状態であるため、患者は非麻痺肢を過使用する可能性があります。非麻痺肢の過使用は非障害半球の過活動を促すため、結果として障害半球の抑制を促し、麻痺肢の活動を低下させます。

あくまで理論的な話に感じますが、機能回復とは関係があるのでしょうか?

半球間抑制のアンバランスは機能回復とともに改善する

麻痺手の握力の回復過程において、脳活動がどのように変化したかを調査した研究があります。はじめのうちは麻痺手の握力はほぼ無く、麻痺手で握ろうとすると非障害半球の一次運動野の活動が高まり、障害半球の一次運動野は活動しない状態でした。しかし、麻痺手の握力が改善するに連れて、障害半球の一次運動野が活動し、反対に非障害半球の一次運動野は活動が低下する1)という結果でした。

麻痺肢の機能回復には半球間抑制のアンバランスを改善することが重要になってきそうですね。

本日のまとめと私案

半球が障害を受けることで半球間抑制のアンバランスが生じ、麻痺肢の活動が低下する。

非麻痺肢の活動を抑制して麻痺肢の練習を行うことでアンバランスは改善しそう。

理学療法士が立位練習を行う時、平行棒を非麻痺肢で過剰に支持するような練習を行わせている方がよく見られますが、これはアカンですね。長下肢装具を用いて麻痺肢に荷重を掛けやすくし、非麻痺肢の過活動を抑制するような練習が吉ではないでしょうか。

ところで、理論的な話でしたが「半球が障害される」と「非麻痺肢の過使用」のどちらが大きな問題となるのでしょうか?

赤茄子

1) Christian G, et al. Connectivity-based approaches in stroke and recovery of function. Lancet Neurol, 13(2): P206-216, 2014.

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