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酸素吸入中のSpO2>98%は安全?酸素解離曲線とSpO2の解釈

本日の疑問

赤茄子です。

新型コロナウイルスの第7波が世間で話題になっていますね。

少し前ではありますが、厚生労働省がパルスオキシメーターの積極的な活用を推奨してから、医療業界外の人もSpO2に注目するようになりました。

健常成人であれば、安静時にだいたい98%前後で経過しますが、加齢や呼吸器疾患により酸素を取り込む能力が低下するとSpO2も低下しますよね。

リハビリ中はSpO2が高くなることよりも、下がることばかりに注目しやすく、高く維持していることに違和感をもつセラピストは非常に少ないのではないでしょうか?

SpO2が高い(>98%)という状態は本当に問題ないと言えるのでしょうか。

実際の酸素解離曲線とSpO2の解釈

本日の疑問を解決するにあたって知っておくべき内容が"酸素解離曲線"になります。

動脈血酸素分圧(PaO2)と酸素飽和度(SpO2)の関係を図示したものであり、下記の図の赤く囲まれた範囲を教科書で見ることがあります。

酸素が多く存在する(PaO2が高い)場所(動脈血)ではヘモグロビンと酸素が結合し(SpO2が上昇)、酸素が少ない場所(PaO2が低い)場所(静脈血)ではヘモグロビンが酸素を離すことで組織に酸素を供給しようとする性質を表しています。

そのため、パルスオキシメーターで測定可能なSpO2が低下すると、血中の酸素量が不足している状態となり、休息や酸素投与を考慮することになります。

そして酸素を投与し、98%になって「あ~よかった」と思ってしまうのです。

ここに落とし穴があります。

教科書的には赤く囲んであるところで終わっていますが、実は続きがあります。

酸素投与量を増やしていく(PaO2が100Torr以上に増えていく)と、150TorrでSpO2が100%となり、その後の150~500Torr範囲で一定1)になります。

つまり、SpO2で酸素分圧が予測できるのは97%までであり、その後の酸素分圧過多は予測できないのです。

ところで、酸素分圧が高すぎると問題があるのでしょうか?

高酸素血症のよる弊害

酸素が多ければ多いほど良い…というのは間違いです。

酸素は人間にとってエネルギーでもあり、毒でもあるからです。

血中酸素が多い(高酸素血症)では以下のような弊害が生じます。

高酸素性肺障害

高濃度の酸素を長期間吸入し続けると、酸素が肺に障害を与える(酸素中毒)と言われています。

PaO2>450Torr以上、またはFiO2(吸入酸素濃度)>60%で生じやすい2)と報告されています。

吸収性無気肺

通常、肺胞の中には一定の窒素ガスが存在し、肺胞が潰れるのを防いでいます。

しかし、高濃度の酸素が吸入されると肺胞内の窒素が洗い出され、肺胞が潰れやすくなります(吸収性無気肺)。

無気肺では換気血流不均衡を生じ、低酸素血症になりやすくなります。

CO2ナルコーシス

慢性呼吸不全のある患者はPaCO2が高くなっており、CO2濃度に対する換気促進機能が低下(麻痺)します。

O2に対する反応は可能であり、上記状態で酸素吸入を行うと「酸素たくさんあるから換気しなくていいよね」と脳が反応し、換気を抑制してしまうことで呼吸状態が悪化します。

これをCO2ナルコーシスといいます。

CO2ナルコーシスの患者には基本的にSpO2を低く設定されます。

本日のまとめ

  • 酸素解離曲線には続きがあり、PaO2>150Torr以上でSpO2が100%と一定になる
  • 酸素吸入している患者のSpO2>97%では、PaO2が100~500Torr範囲にあり、酸素分圧の詳細が予測できない
  • 高酸素血症、PaO2>450Torrでは様々な呼吸器障害が生じる可能性がある

SpO2が低く保たれている患者にはそれ相応の理由があります。

慌てずに対応できるようにしたいですね。

赤茄子

1) 髙橋仁美:この30題で呼吸理学療法に強くなる 第1版. 株式会社医学書院, P168-175, 2017. 

2) Kallet RH, et al: Hyperoxic Acute Lung. Respir Care, 58: P123-141, 2013.