職場の見えないストレス図鑑

職場内にある見逃しがちなストレスを紹介するブログ

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肝機能が悪いと抗がん剤減量?抗がん剤投与における肝臓への影響。

本日の疑問

赤茄子です。

抗がん剤治療中のがん患者の外来リハビリ依頼が来ました。

独歩でADL自立だし、何のリハビリするの?と疑問に思いつつ、医師からの依頼を確認。以下、要約。

「肝機能悪いのでこのままじゃ抗がん剤減量せざるを得ないけど…したくない。なんとかリハビリで頑張らせて!」

何を頑張らせればええの?減量しないためのリハビリって何?

そもそも、何で抗がん剤を減量せざるを得ない状態なの?

抗がん剤と薬物性肝障害

厚生労働省が公開している"重篤副作用疾患別対応マニュアル"には、薬物による肝臓への影響について以下のように記載されています。

"薬の代謝(化学変化)は肝臓で行なわれることが多く、さまざまな代謝産物が肝臓に出現するため、副作用として肝機能障害が多いと考えられています"

厚生労働省: 重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性肝障害 令和元年改定. P6.

つまり抗がん剤に限らず、服薬している場合、何かしら肝機能障害が生じる可能性があり、薬物によって生じる肝機能障害を総称して"薬物性肝障害"と言います。

また、薬物性肝障害は一般型特殊型に分類され、一般型は中毒性特異体質性に分類されます(下記図)。

厚生労働省: 重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性肝障害 令和元年改定. P11の図1を引用

ちなみに、抗がん剤における薬物性肝障害のほとんどは中毒性だそうです。

中毒性は、肝臓の代謝機能を超えた薬物投与により生じるため、抗がん剤投与中に肝機能が低下した場合は薬物の減量が必要になります。

少し前のニュースではありますが、肝機能低下を見過ごしたまま抗がん剤を投与し続け、肝機能不全になった患者が死亡したという医療事故がありました。

 

www.asahi.com

 

肝機能改善のための運動療法

薬物性肝障害では肝臓の脂肪変性に伴い、脂肪肝になる場合があります。

また、元々脂肪肝がある患者が抗がん剤治療を開始した際に、肝機能悪化が助長される場合があります。

脂肪肝は自体は大きな症状はありませんが、放っておくと脂肪肝⇨肝炎⇨肝硬変⇨肝がんと進行してしまうため、脂肪肝の時点で肝機能を改善させる必要があります。

通常では「抗がん剤を減量しましょう」という話になるのだと思いますが、がんの進行状況によっては維持したい~増量したいと考える医師もいるのではないでしょうか。

そのため、今回のようにリハビリ依頼がくるのではないでしょうか。

つまり、「リハビリで体重の減量をしてくれ」と言われているってことですね。

本日のまとめ

  • 抗がん剤(に限らず薬物全般)の使用は、肝機能障害を起こす可能性がある
  • もともと肝機能が悪い場合は薬物の使用でさらに障害を助長する
  • 上記の場合、薬物の減量が行われる
  • 薬物投与量を維持~増加するために、体重減量のためのリハ依頼がくる場合がある

ちなみに、運動開始から15~20分で糖質から脂質へATP産生のエネルギー源が移行する1)ことや、カルボーネン法で運動強度の係数:0.4~0.5が健常成人のATレベル2)とされているため、以下で求められる目標心拍で20分以上の運動を行うのが安全に減量するために望ましいのではないでしょうか。

カルボーネン={(220-年齢)-安静時心拍)}×0.4~0.5+安静時心拍

赤茄子

1) 堤達也:交感神経系の脂質代謝に及ぼす影響. 産業医, 10(2): P90, 1968.

2) 北見祐史:アスリート,健常者及び成人病感患者におけるAT時心拍数―カルボーネン法との比較検討―. 体力科学, 45(6): P693, 1996.