本日の疑問
赤茄子です。
以前、深呼吸が効率のいい呼吸方法であることを説明しました。
ざっくりおさらいしますと、換気に関与しない空間(解剖学的死腔:約150mL)があるため、1回の吸気で取り込める量が少ないと、肺胞で換気する量が少なくなってしまう⇨1回で取り込める量を増やすには"深くゆっくりな呼吸"が良い、ということでした。
深呼吸は通常の吸気筋活動(横隔膜、外肋間筋)に加え、呼吸補助筋(斜角筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋…など)が活動しまが、あくまで筋活動を他の筋活動で補助するという状態です。
筋活動以外で換気機能を改善させる要素に対しアプローチできれば、換気機能の効率がより改善しそうな気がします。
そんな方法あるのでしょうか?
胸郭の可動性を改善させる"シルベスター法"
吸気の際に、上部の肋骨が挙上するように動くと胸郭が拡張し、拡張した分肺に空気が流入しやすいくなります。
この胸郭の拡張を患者自身に補ってもらいながら呼吸練習を行う方法として、シルベスター法があります。
シルベスター法は、両手を組み、上肢をゆっくり挙上させながら吸気を行った後、ゆっくり呼気しながら上肢を下制する方法です。
上肢の運動を行うことで吸気・呼気時の胸郭の可動性が改善し、換気量が増加すると考えられています。
通常の深呼吸と比較すると…
シルベスター法はやり方だけ見ると"深呼吸+胸郭の拡張"というようなイメージです。
したがって、通常の深呼吸と比較して換気量の増加が見込めるのは予想の範疇と思われます。
原著論文で見つけることはできませんでしたが、健常若年成人に対し通常の呼吸、深呼吸、シルベスター法を用いた呼吸を比較した報告(学術大会)があります。
結果としては、通常呼吸<深呼吸<シルベスター法のように1回換気量の有意差があった1)というものでした。
本日のまとめ
- シルベスター法とは、呼吸に合わせた上肢の挙上・下制運動を行うことで胸郭の可動性を改善(拡張しやすくする)し、換気量を増加させる方法である
- 換気量が増大することで、呼吸効率が改善する(肺胞換気量が増加する)可能性がある
通常の深呼吸だけ行っても換気量が確保できない、SpO2が上がってこない、胸郭の動きが視覚的に乏しい、といった際に試してみるいいかもしれません。
赤茄子
1) 湯口聡・他:深呼吸方式の違いによる換気量の変化―シルベスター法と深呼吸の比較―. Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集).